飛躍の源泉

自動車部品から医療機器へ

東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏

長野県諏訪市の株式会社小松精機工作所は長野県を代表する自動車部品メーカーのうちの1社。自動車のプレス部品と切削加工を主力事業とし、特に燃料噴射ノズルでは世界シェアが30%を超えている。

そんな同社の専務取締役・小松隆史氏が2013年、ナノ・グレインズという医療機器ベンチャーを立ち上げた。小松氏は2002年から独立行政法人物質・材料研究機構との間で、超微細粒鋼と高窒素ステンレス鋼に関する産学連携を展開。研究内容は対外的に評価され、経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)、地域新生コンソーシアム研究開発事業などに採択された。

ある時、小松氏の学会報告を大手医療機器企業の担当者が聴講する。小松氏は同社に招待され、「超微細粒鋼の加工特性」に関する研究・実験を同社内で行う。その結果、この研究成果が医療機器に応用可能であることを発見。ナノ・グレインズの起業を決意した。

小松氏は現在、同社の社長を務めている。大手医療機器企業出身の人材も獲得したうえで、医療機器に関する金属材料の研究開発や内視鏡用処置具に関するODM事業(取引先のブランドで販売される製品の設計・生産)を展開し、徐々に業況を拡大している。

2017年8月7日

株式会社ナノ・グレインズ :

長野県諏訪市沖田町3-15 フロンティアビル5階
【株式会社ナノ・グレインズ HP】

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】

山本聡