飛躍の源泉

「古いもの」は「新しいもの」

岐阜経済大学経営学部講師
大前 智文 氏

愛知県一宮市で、日本独自の紡績機「ガラ紡」による綿糸紡績、ガラ紡糸を使用した綿製品の企画・製造・販売を営む木玉毛織株式会社。衰退傾向が続く尾州毛織物産地の中で、新たな取り組みから再起を果たそうとしている。

1895(明治28)年に創業。毛織物を中心とする婦人服地メーカーとして特殊品の量産を志向した。しかし、1990年ごろをピークに経営環境が悪化。2006年には毛織物からの撤退を決断した。新たな事業活動を模索する中、着目したのがガラ紡機。ガラガラという音を立てる、明治期の日本で発明された紡績機だ。この「ガラ紡」とオーガニック・コットンの落ちワタを組み合わせた綿糸と綿織物に新たな活路を求めた。「肌に優しく地球にも優しい」を合言葉に、糸紡ぎ、染め、織り、縫製に創意工夫を施し、現代的な生活様式に適応した製品が徐々に支持を集め、事業は軌道に乗りつつある。

取締役社長の木全元隆氏は「過去の遺物であった『ガラ紡』が『新しいもの』として受け入れられている。手応えを感じる一方、日本独自の紡績技術を守るという使命を自覚するようになった」と話す。温故知新の想いを新たに、前向きな姿勢から糸を紡ぐとともに、伝統技術・機械を後世に紡ぐことを決意する。

2017年8月21日

キタマオンライン(木玉毛織株式会社) :

愛知県一宮市西萩原字上沼40
【キタマオンライン(木玉毛織株式会社) HP】

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大前智文

1982年愛知県生まれ。
名城大学経済学部特任助手を経て、2017年より岐阜経済大学経営学部講師に着任。日本中小企業学会幹事。駆け出しの研究者としてフィールドワークを重ね、中小企業に関する調査・研究に取り組む。

大前智文