日本の問題

問われる「オフィス」の意味

大阪経済法科大学
経済学部教授
米山秀隆 氏

新型コロナ禍によって出社が困難になり、否応なくやらざるを得なくなったテレワークであったが、その期間が長引くにつれ、コミュニケーション不足やそれに伴う生産性低下といった問題に直面している。

完全テレワーク化できる業務には、 IT系であるかどうかにはかかわりなく、対顧客業務をほぼ1人で完結できる場合や、チーム作業でも分担がはっきりしている場合など、やるべきことが明確かつ固定されている傾向があるように思われる。

それ以外の多くの業務では、社員同士がコミュニケーションをとりながら業務を進め、その改善を図ったり、新たな商品・サービスの提供を考えたりしている場合が多い。思いがけない相手との対面で新たな発想が生まれることもあるが、オンラインではこの貴重な機会が失われる。経営者の中には、オフィスはコミュニケーションによって新しいアイデアが生まれる場所として不可欠で、今後も投資すべき場所との意見もある。

新型コロナ禍は、なぜ会社がオフィスを持ち、一緒に働く必要があるのかについて、その意味を根本的に問い直しているといえる。新型コロナ収束後にオフィス勤務に戻すにしても、集まって働くことでどのような効果が発揮されるべきなのか、またその効果が発揮されるオフィスの形態や、必要な出社日数はどの程度なのかなど、新しい出社形態のデザインが求められている。

2021年1月4日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏