飛躍の源泉

街のかかりつけ薬局へ

立教大学名誉教授
山口 義行 氏

現在、薬局の数はコンビニエンスストアより多いといわれている。高齢化で医療や医薬の役割が大きくなる一方、薬事法改正や医療費の削減傾向、異業種参入による競争激化などで業界は再編と淘汰の時代を迎えている。

三重県を中心に薬局を展開する株式会社エムワン。代表取締役の村井俊之氏は開業医の隣に出店する戦略で、売り上げを伸ばしてきたが、その勢いを受けて総合病院の近くに出店したところ、わずか1年で撤退。患者の動線を見誤ったことが原因だった。

そもそも立地に依存するのが間違いなのではないか―。確かに多くの薬局は病院の近くにあり、薬剤師は患者が訪れるのを待って薬を提供する。しかし、本来薬剤師が提供する価値は別にあるはずだ!

そうして始めたのが、訪問薬剤管理指導業務という「薬の家庭へのお届けサービス」だ。薬局まで来られない家庭を薬剤師が訪問し、飲み合わせの確認だけでなく、正しく服用できているか指導。薬の効き目や副作用の発症も確認し、必要に応じて医師へ薬剤の変更なども提案する。患者に親身になれる薬剤師を育て、「立地」ではなく「人」を活かす薬局経営。現在同社は9店舗に拡大、「街のかかりつけ薬局」として地域から愛されている。

2017年9月4日

エムワングループ(株式会社エムワン) :

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山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。2017年4月から名誉教授。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏