日本の問題

新しい林業への期待

慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

都市に住んでいる人にとって林業は必ずしも身近な産業ではないだろう。しかし考えてみれば、日本の国土の約67%、つまり約3分の2は森林だ。とりわけ北海道や東北地方ではその比率が極めて高くなっている。そして今、この森林という資源を見直す重要な転機を迎えている。

木は概ね樹齢10年を過ぎると木材として利用できる適齢期を迎えるが、日本ではその割合が今や5割以上に達している。またこれまで、国産材は価格競争力がないと考えられていたが、外材の価格上昇によって価格面でも十分な競争力が生まれつつある。いわば林業は新しい成長産業としての条件を整えつつあるのだ。

そうした中で、政府も森林経営管理法を整備し、林業の重要性に着目するようになった。この法律は経営管理がなされていない森林について、市町村が森林所有者の委託を受けて経営管理することや林業経営者に再委託することによって、林業経営と管理の改善を目指している。

そこに地球環境問題が加わった。樹木は若い間は積極的に光合成を行い酸素を排出するが、樹齢とともにその機能が低下するのだという。つまり適齢期の木を市場に出し、替わって若い木を植えていくことは、経済成長を促進しながら地球環境の改善にも貢献することになる。

欧米並みの大規模な投資が促進され、新しい林業につながるような、さらなる制度整備が期待される。

2021年4月26日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)