飛躍の源泉

冬の訪れと「むくり鮒」

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

冬の訪れとともに始まったのは、「むくり鮒(ぶな)」作り。作っているのは、山形県川西町玉庭地区の鈴木さくさんたち、玉庭農産物加工センターの高齢者の皆さんだ。

使われなくなった水田が増えてきた2000年ごろ、「何か水田を有効利用できないか」と考えたのが始まりだった。玉庭地区は水もきれいなため、水田で鮒を育てて販売しようとしたが、なかなかうまくいかなかった。

そこで思いついたのが、子どものころに食べた「むくり鮒」。小さな鮒をさばき、内臓などを取った後、くるりと「むくって(むいて)」形を整える。それを焼き、油で丁寧に揚げた後、水あめやみりんで味をつける。

この地区では、たんぱく源として古くから淡水魚を加工し、食べる習慣があった。ただ、むくり鮒は一時途絶えていたため、再生産に向け山形県内や長野県などに研修に出かけた。

本格的に生産・販売を始めたのは、2005年から。毎年冬の訪れの11月から翌年2月末くらいまで生産する。見かけが鮒そのものなので、最初はみんなおっかなびっくりだが、そのおいしさに驚き、リピーターも多い。

「今どきの若い人たちは、こんな手間がかかることしないだろ」と笑いながらも、鈴木さんたちは今日もむくり鮒作りに精を出す。

2017年12月4日

玉庭農産物加工センター :

山形県東置賜郡川西町玉庭

過去記事一覧

中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】

中村智彦氏