日本の問題

財政の持続可能性

大阪経済法科大学
経済学部教授
米山秀隆 氏

日本の政府債務残高の対名目GDP比は2020年で約238%と主要先進国で突出して高くなっているが(IMFによる推計)、アベノミクス以降はほぼ一定水準を保っている。

アベノミクス以降でもその年の行政経費をその年の税収だけで賄える状況にはなっておらず、債務は積み上がっている。しかしそれでも、「政府債務残高/名目GDP」が一定を保っているのは、分子の増加ペースである金利を、分母の増加ペースである名目成長率が上回るようになったためである。アベノミクス以降の大規模緩和によってデフレではない状態となり、名目成長率がプラスに転換したことが大きい。一方で金利は低く抑えられている。

「政府債務残高/名目GDP」が一定に保たれていることから、日本の財政は破綻に至る状況ではない。名目成長率が金利より高いという現在のマクロ的環境が維持され、かつ毎年債務が新たに積み上がるという状況でなくなれば、「政府債務残高/名目GDP」は低下に向かっていくことになる。

さらに今後を展望すると、世界的にインフレ傾向が強まっており、それが適度に日本に波及すれば、物価上昇で名目成長率が高まっていく。その場合でも金利を低位に維持できれば、財政的には望ましい環境になる。微妙なバランスであるが、日本の財政を破綻させず、持続可能な状態に保つための狭い道である。

2021年12月27日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏