日本の問題

「都市鉱山」に高まる期待

地域政策研究家
荒田 英知 氏

5月30日の「ごみゼロの日」に神奈川県相模原市から興味深い話題が発表された。市内の一般ごみを燃やす清掃工場で貴金属の回収調査を行なったところ、1年間で金と銀それぞれ約15~16㎏を回収。売却額から費用を差し引いても約3,700万円の黒字になったというのだ。用いられたのは高温の砂でごみを燃やす流動床式ガス化溶融炉で、炉底に堆積した砂に金銀が含まれていた。

廃家電や電子機器に含まれる有用な貴金属などは「都市鉱山」と呼ばれ、それを取り出して再利用する取り組みは国連が進めるSDGs(持続可能な開発目標)にもかなうものだ。

2021年に開かれた東京五輪・パラリンピックでは約5,000個のメダルすべてを、全国から集めた廃携帯電話などの小型家電からリサイクルしたことが知られている。

秋田県にある小坂製錬は都市鉱山の可能性にいち早く着目。専用に開発した炉から20種類もの非鉄金属を取り出す技術力は世界屈指とされる。関連企業の立地も進み、リサイクルが義務づけられた電子機器の基板などが世界中から集まってくる。

今回、相模原市で得られた成果は、私たちの日常生活から出る一般ごみにも都市鉱山の価値があることを示唆している。同じタイプの焼却炉は、ダイオキシンなどの環境対策で全国に建設されている。都市鉱山へのチャレンジは、資源小国・日本の生きる道として大いに期待されよう。

2022年7月11日

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荒田 英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学を卒業後、PHP研究所に入社。地域政策分野の研究員として30年以上全国をフィールドワーク。北海道大学特任教授、九州国際大学非常勤講師も務めた。

荒田 英知 (あらたひでとも) 氏