日本の問題

「ウィズ・コロナ」を考える

慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

新型コロナウイルス感染が世界を襲ってから2年半以上が過ぎた。私はこの5月にスイス、7月にイギリスに出張する機会があった。こうした地域では出入国はほぼ自由で、街でマスクを付けている人もほとんど見かけない。まさに欧米の主要国は「ウィズ・コロナ」だ。一方、中国は「ゼロ・コロナ」。日本はその中間にあるが、主要国から見る限りはかなり中国に近い状況といえるだろう。

日本の累計感染者数は1,700万人余(8月21日現在)。興味深いことに、3分の1以上が第7波といわれるこの1~2カ月の間に感染している。

一方で、新型コロナによる死亡者発表数は1日平均(2021年)でおおむね40人程度。全体の死亡者数(2021年)は1日平均4,000人弱に上り、新型コロナによる影響は限定的といえるだろう。重症化率や致死率が低いとされる変異ウイルスが一気に感染拡大している今は、日本社会全体に強力な集団抗体が形成されていることを意味していよう。

人口比で世界最大規模の病床数を持ちながら、医療崩壊を懸念しなければならない日本。多くの医療リソースが有効活用されないまま、主要国の「ウィズ・コロナ」と大きく乖離した状況が続いている。

間もなく再び海外出張しなければならない。日本で帰国時に求められていたPCR検査の要件がようやく緩和される見通しになった。「ウィズ・コロナ」への一歩といえるだろう。

2022年8月29日

過去記事一覧

竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)