日本の問題

"安い国"、日本の未来

慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

新型コロナ禍の影響が次第に和らぎ人の動きが活発になってきた。これまで控えられてきた海外出張や旅行も大きく動き出した。私自身2022年5月から通算7回、海外に出張している。そしてそのたびに感じるのが海外ではすべてが高い、逆に日本は安くつく国だということだ。

この3月にはサンフランシスコに行く機会があった。カリフォルニア州の最低賃金は1時間15.5ドル(約2,000円)。日本の賃金はアメリカの約半分なのだ。ちなみに1人当たりGDPでみても日本はアメリカの半分強にすぎない。

もちろんその要因のひとつは為替レートにある。重要なのは、なぜ円が安いかという点だ。為替レートの決定要因をあえてシンプルに言えば、短期的には内外の金利差が重要だ。そして中期的には経常収支、長期的には経済のファンダメンタルズ(すなわち実力)で決まる。

このうち金利については、日本銀行の異次元金融緩和で国内金利が低く保たれてきた要因は確かにあるし、これが今後少しは変化し、円安が緩和される可能性はある。しかし、経常収支とファンダメンタルズはどうなのか。これは、日銀の問題ではない。まさに、日本の構造改革を進めて潜在力を高める努力を政府がするのかどうか、にかかっている。

それが行われず、目先の短期的な救済政策を続けるなら、安い日本はまだまだ続くことになる。

2023年4月17日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)