日本の問題

「自治体PR動画」が花盛り

地域政策研究家
荒田 英知 氏

インターネットやスマートフォンの普及を背景に、地方自治体が地域情報を動画でネット配信することが増えた。注目事例も少なくない。

その草分け的存在は、大分県の「おんせん県おおいた」である。日本を代表する温泉地の美しい映像を情報発信しており、2015年に制作された「シンフロ」はシンクロナイズドスイミング(当時)とコラボした芸術性の高さが評判になった。

ユニークな作品としては、宮崎県小林市の「ンダモシタン小林」がある。フランス人男性が地域の魅力を語る字幕付きの映像を見ていると、話しているのはフランス語でなく地元の方言だと最後に明かされ「思わず二度見する」と話題をさらった。

岡山県吉備中央町は、2023年1月に町長が逮捕されたとする動画を公開。続編で取り調べを進めたところ、町の目玉施策が次々と明るみに。新手の町勢要覧とでもいうべきか。

最近は移住促進にフォーカスした動画も多い。北海道紋別市はIターンやUターンを描いた短編ドラマ計8話を、2022年11月から順次公開したところ、いずれも10万回以上視聴された。移住をめぐる様々な要素が巧みに織り込まれた内容である。

今後のインバウンド(訪日外国人客)需要回復をにらめば、動画の多言語配信も進みそうだ。その時代の最新技術をどう用いるかが地域活性化のカギを握ることは、昔も今も変わらないのだと実感させられる。

2023年5月8日

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荒田 英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学を卒業後、PHP研究所に入社。地域政策分野の研究員として30年以上全国をフィールドワーク。北海道大学特任教授、九州国際大学非常勤講師も務めた。

荒田 英知 (あらたひでとも) 氏