時代を読む

生成AIをどう管理するか

東京大学名誉教授
伊藤元重 氏

チャットGPTなどの生成AIが世の中を大きく変えそうだ。社会としてどう管理したら良いのかの議論も始まっている。G7広島サミットでもこのテーマが取り上げられた。

生成AIは強力な革新技術である。インターネットの登場と同等、あるいはそれ以上のインパクトを社会にもたらすという専門家もいる。企業の姿や人々の働き方だけでなく、社会の姿を大きく変えるだろう。活用することで社会全体として大きな利益を得られることは間違いない。

一方で様々な弊害も想定される。プライバシーの侵害、偽情報の流布、サイバーセキュリティ問題などがすぐに思いつく。生成AIが戦争行為や犯罪などに使われた時、どのような影響が及ぶのか想像もつかない。

こうした中、欧州では生成AIを公的に管理する仕組みの導入が真剣に議論されている。AI活用を正しい方向に導くためには政府の関与が必要であるとの考えだ。これに対し、米国は政府による安易な関与には慎重で、技術革新によって経済成長を実現するためには、ルール作りを民間に任せたほうが良いという姿勢だ。企業が自主ルールを作るだけでなく、業界団体などを通じた仕組みの構築が有効であるという。

どちらの方向が好ましいのか、今の段階で判断するのは難しい。日本は米国と同じような方向を目指すように見えるが、実際にどう展開するのか、注目したい。

2023年6月5日

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伊藤元重 氏

1951年生まれ。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授などを経て1993~2016年東京大学の経済学部と大学院経済学研究科の教授を歴任。2007~2009年は大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)。2016年から2022年3月まで学習院大学国際社会科学部教授。東京大学名誉教授。
【伊藤元重研究室】

伊藤元重(いとう もとしげ)